浦添市ホームページに、2021年〜2030年にかけての浦添市のまちづくり方針を示した第5次浦添市総合計画が公表されていました。特に目新しい話もないのですが、キャンプキンザー跡地開発に関係してきそうな記述を整理し、感想をまとめてみました。
基地跡地利用
・国や県と連携しキンザー早期返還に取り組む。
・跡地の早期整備のため、返還前の文化財や地形・自然環境の調査実施に努める。
・将来の都市像を見据えた土地利用・都市整備を行う。そのために地権者、市民、企業や関係機関と連携し跡地利用を進め、必要に応じて跡地利用計画の変更を検討する。
・跡地開発には近隣市町村の開発計画と整合・連動を図る。
・跡地整備は総合的かつ段階的に行う。またPFIの活用や公共用地の先行取得に努める。
・跡地は利便性が高く快適な都市文化を発信するための「顔」とする。そのために跡地と既存市街地とを繋ぐ都市軸の形成と都市施設の整備を行う。
・西海岸をのリゾート性・自然・風土を生かして市経済を牽引する国際観光・交流型産業を発展させる。
西海岸開発
・西海岸開発はキンザー跡地と一体で計画。
・西海岸地区に新たな産業拠点の形成を図る。このために那覇港管理組合と連携して港湾計画の改訂と企業誘致に取り組む。
・国や県と協力して税制上の優遇措置を拡充し、新たな企業等の立地促進を図る。
・世界水準の観光リゾート地の形成を図る。そのために環境アセスメントを進め、マリーナやビーチなどの交流拠点を整備する。
・パルコより北側周辺の海域は自然環境の保全・活用を図る。
・今後5年間の宿泊施設の誘致目標は1先。
・那覇港は県の最重要港湾なので防波堤などの整備を進めるとともに国際流通機能の拡充、物流コストの低減に向けた施策を進める。
産業振興
・浦添市産業振興センター(結の街)を拠点に創業者への支援を実施。
・雇用創出を図るため企業の市内立地を促進し付加価値の高い分野の産業集積化や新産業創出を図る。併せてIT人材の育成を図る。
・宿泊施設の誘致を行う。
観光振興
・西海岸開発やモノレール延伸等による経済効果を最大限享受すべく、「浦添市観光振興計画」に基づき観光振興を推進中。
・カーミージー周辺は観光資源としての活用とともに貴重な自然資源として保全。
・モノレール延伸に伴い浦添城周辺への観光客増加が見込まれるため周辺整備を行う必要。
これらを見た感想
冒頭にも書いた通り、特に目新しい話はありませんでした。これ自体は基本計画ということで、あくまでコンセプトなので具体的な話があるわけでもないですし。個人的には「全体のコンセプトはこんなもんだよな」と思いつつも、産業振興・観光振興において「国内・世界と戦ってどう人を呼び込んでいくか」という視点・気迫に欠けているように見えるのが残念だと思いました。
一例ですが、私が住んでいる福岡市では、市長主導のもとでスタートアップ企業の誘致にかなり力を入れています。元々は行政が用意したスタートアップ用の小さなオフィスにいくつかのベンチャー企業が入居するだけでしたが、その数もかなり増えてきて、今や地元を代表するような大企業との協業事例もみられているほか、スタートアップ企業の入居を見込んだ民間オフィスビルの開発が出てくるなど、産業としての広がりがみられています。おしゃれなオフィスが用意されていたり、経営者同士の交流の場が用意されていたり、国家戦略特区によるスタートアップ法人税減税制度があり、東京・関西への抜群のアクセスや優れた住環境が揃っていることでスタートアップ企業が増えています。スタートアップ企業の経営者・スタッフは比較的若いので、こうした企業が多くあることで街の雰囲気も明るくなっており、スタートアップ企業以外の民間投資も集まってくるなど、好循環がみられています。
浦添市も「創業支援」に力を入れるとしていますが、役所的発想で「何らかの優遇制度を取ってきて、それで少しでも企業が立地してくれたら」くらいの感じでは本当の意味で産業振興を図ることは無理だと思います。幸い、キンザー跡地は空港までの抜群のアクセスと、優れた住環境・勤務環境を両立できる場所にあると思います。また、沖縄県は米軍関係者が多く、インターナショナルスクールも多いので優秀な英語人材が多いですし、アジアとの近さという意味では国内でも随一の立地です。
こうした浦添市の持つ魅力をどう伸ばし、産業振興・観光振興につなげていくか。本格的な人口減少社会に突入していく中でどういう人に住んでもらい、賑わいのある街を残していくか。もちろん基本計画に語られていない方策もあると思いますが、大きなストーリーを描き、浦添市や市長はそれを強く情報発信しながら粘り強く取り組む必要があります。繰り返しになりますが、「国内・世界でどう存在感を発揮していくか」という視点を忘れずに素晴らしい街を作って欲しいと思います。
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